2020年12月14日

2020年度上原記念生命科学財団 上原賞・各種助成金受賞者決定のお知らせ

公益財団法人上原記念生命科学財団(東京都豊島区、理事長:上原明/大正製薬ホールディングス株式会社代表取締役社長)は、1214日(月)に開催した理事会において、2020年度上原賞・各種助成金贈呈対象者を決定しましたのでお知らせいたします。
今年度の上原賞は2名、各種助成件数は417件、助成金総額(上原賞副賞を含む)は153,780万円となりました。

上原賞 2名 副賞1件 3,000万円  ※掲載は五十音順

影山 龍一郎氏 京都大学 ウイルス・再生医科学研究所 教授

 対象となった研究業績
「神経幹細胞の増殖と分化制御機構の解明」

吉村 昭彦氏 慶應義塾大学 医学部 教授

 対象となった研究業績
「サイトカイン応答を制御する分子機構の発見とその病態解明」

各種助成金 417件 147,780万円

○特定研究助成金

19

6,900万円

○研究助成金(1500万円)

110

55,000万円

○研究推進特別奨励金(1400万円)

10

4,000万円

○研究奨励金(1200万円)

120

24,000万円

○海外留学助成金リサーチフェローシップ

83

3150万円

○海外留学助成金ポストドクトラルフェローシップ

56

23,500万円

○その他

・国際シンポジウム開催助成金

9

900万円

・来日研究生助成金

10

3,330万円

公益財団法人上原記念生命科学財団は、1985年の設立以来、今年度で36年目となります。
2020年度までの生命科学に関する諸分野の研究に対する助成(上原賞含む)は10,460件、約330億円になります。

上原記念生命科学財団のホームページはこちらをご覧下さい。

上原賞受賞者 (五十音順)

受賞者氏名: 影山 龍一郎(カゲヤマ リョウイチロウ)医学博士

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所属機関および役職: 京都大学 ウイルス・再生医科学研究所 教授

生年月日

1957年310

略  歴

1982年 3 月  京都大学医学部 卒業

1986年 3 月  京都大学大学院医学研究科 博士課程修了

1986年 6 月  米国国立癌研究所 客員研究員

1989年12月  京都大学医学部附属免疫研究施設 助手

1991年12月  京都大学医学部附属免疫研究施設 助教授

1995年 4 月  京都大学大学院医学研究科生体情報科学講座 助教授

1997年12月  京都大学ウイルス研究所(現ウイルス・再生医科学研究所)教授

受賞対象となった研究業績

「神経幹細胞の増殖と分化制御機構の解明」

アストロサイトへの分化を誘導するHesファミリー因子群やニューロンへの分化を誘導するAtonalファミリー因子群を発見し、これらは神経幹細胞の未分化性の維持や増殖能の活性化といった分化とは逆の機能を持つことを見出した。発現動態解析と自らが開発した光遺伝学的技術を組み合わせることで、どれか1種類の分化誘導因子のみが持続発現すると分化誘導に働くが、これらの因子の発現が振動すると神経幹細胞の未分化性の維持や増殖に働くという、極めてユニークな制御機構を解き明かした。これは、幹細胞の多分化能という性質は、複数の異なる分化誘導因子が互いに拮抗しながら発現振動する状態によってもたらされているということを世界で初めて明確に示した画期的な成果である。増殖能をほとんど持たない成体脳の神経幹細胞において、上記因子の発現を胎生期のように振動させることで、増殖能を効率良く活性化することを可能とし、脳神経組織の再生に向けた技術基盤を確立した独創的かつ先進的な研究業績である。

受賞者氏名:吉村 昭彦 (ヨシムラ アキヒコ)理学博士

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所属機関および役職:慶應義塾大学 医学部 教授

生年月日

1958年1212日生

略  歴

1981年 3月 京都大学理学部 卒業

1983年 3月 京都大学大学院理学研究科 修士課程修了

 

1985年 6月 京都大学大学院理学研究科 博士課程中退

1985年 7月 大分医科大学生化学教室 助手

 

1986年 3月 理学博士(京都大学)(論理博第942号)

 

1987年 9月 鹿児島大学医学部腫瘍研究施設 助手

1989年 6月 鹿児島大学医学部腫瘍研究施設 助教授

1995年 6月 久留米大学分子生命科学研究所 教授

2001年 1月 九州大学生体防御医学研究所 教授

2008年 4月 慶應義塾大学医学部微生物学免疫学教室 教授

受賞対象となった研究業績

「サイトカイン応答を制御する分子機構の発見とその病態解明」

炎症反応の分子機構の解明は、医学・生命科学の重要な課題の一つである。分子レベルから個体レベルまで幅広く免疫制御の分子細胞機構の研究を展開する中で、JAK/STAT経路の抑制因子CIS/SOCSファミリーを発見し、サイトカインシグナル調節に負の調節機構が存在することを世界で初めて示すとともに、炎症やアレルギー、自己免疫疾患、腫瘍免疫などにおいて重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、もう一つのサイトカインシグナル経路であるRas/ERK経路においても抑制因子SPREDファミリーを発見し、造血、免疫、神経系で重要な役割を果たしていることを示した。特筆すべきは、ヒトSPRED1が神経繊維芽腫症Ⅰ型に類似した疾患(Legius症候群)の原因遺伝子であることを発見したことである。このように、負の制御を中心に複雑な免疫応答や病態を分子レベルで解き明かし、炎症性疾患の病態解明を飛躍的に発展させた、世界を先導する独創性の高い研究業績である。

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