トップメッセージ

あなたの、健康のそばに。

代表取締役社長上原 明

大正製薬ホールディングス代表取締役社長上原明の写真

着眼大局 時代の流れ

今の時代の大きな流れの特徴は、グローバル化が進んでいることであり、「経営の3資源」といわれる、人、カネ、モノが広くグローバルに展開されてきました。加えて現代では、技術、研究、データベース等からなる知的資源の活用が重要性を増しており、リアルなモノやコトと結びつき、イノベーションが起こっています。その結果、世界中に豊かさが広がると共に、医学の進歩による人口増加や長寿高齢化、また生活者主権の社会の出現をもたらしました。これらが、グローバル化がもたらした「光」の部分であるのに対し、他方「影」の部分として、種々の格差や地球資源の乱獲乱用による温室効果ガスの排出、政治や経済体制の在り方等の問題が表面化しております。

このような「光」と「影」の両面を持つ豊かな社会に対し、様々な動きが生まれてきました。SDGsのように国際間で協調し、世界が直面する課題の解決に向けた取り組みもそのひとつです。SDGsの目標実現のために各企業は社会的責任(CSR)を負い、投資家及び生活者はESGを通した企業の監視と選別を行うことが求められています。

さて、この時代の流れは医薬品産業へどのようなインパクトを与えているのでしょうか。

第一は、高齢長寿化に伴う社会保障費、特に医療費の増加問題です。医療費の効率的・効果的な使用が求められていることが課題として挙げられ、自助・共助・公助の棲み分けが重要になってきました。
その中でも自助、すなわち生活者自身が「自分の健康は、自分のために、自分で守る」という意識を強く持つセルフケア・セルフメディケーションの役割は今後益々大きくなってくると考えています。

第二は、前述の通り、技術・研究・データベース等の知的資源の著しい進歩により、領域を超えた協働が必要になってきたと感じています。医療分野では、基礎研究と臨床医療の領域、そして医薬品研究を含めた異業種全ての領域で知的資源を活用してのオープンイノベーションを図らなければならないと考えています。

第三は、働き方やライフスタイルの変化、通信技術の発展、また直近ではコロナ禍で生活者ニーズが多様化しています。情報の伝達経路、モノの流通経路も大きく変化したことから、小売業態もまた、変化する生活者のニーズに対応しようと変化してきています。特に、自分に適した健康維持や予防、さらには病気の早期発見を、一般論ではなく、「私」個人の状態について相談できる環境や情報、オンライン診療など、健康意識や健康への関心は高まってきています。コロナ禍において、ネット販売や通信販売等の生活者への直接販売・デリバリーの浸透など、情報の伝達やモノの流通経路が大きく変化し、そのスピードが著しく上がってきていると感じています。

着手小局 大正製薬グループの進む道

このような時代の流れの中で、大正製薬グループの進む道はどうあるべきか。この変化を好機と捉えチャレンジし、目指す方向に一歩ずつ歩みを進めていくことが重要であると考えています。

セルフメディケーション事業・国内では、自助・共助・公助の考え、すなわち、自分の健康は自分のために自分で管理するという考え方が進むと思いますので、この考え方を進めるための支援を強化していくことが重要であると考えております。そのためには、生活者ニーズや情報を把握し、それに対応する商品を開発すること、あるいは通販やネット販売といった流通経路の拡大を図ることが必要です。また、小売業態が変化していることを踏まえ、営業・物流体制の変化への対応という視点も重要となります。さらに事業領域については、健康食品・検査機器といった新領域まで広げていくなど、生活者を中心に変化していく事業環境の中で創意工夫をして対応を行っていく考えです。

セルフメディケーション・海外については、2019年に大正製薬グループに加わったフランスのUPSA社、ベトナムのハウザン製薬との品質・製造・情報の一元化・一体化への取り組みを進めてきました。また、2009年に東南アジアOTC医薬品事業へ本格参入して以来、企業のM&Aやブランド買収により現地に根付いたブランドアセットを東南アジアの他国にも活用することにより、OTC医薬品を中心とした事業の強化に取り組んできました。引き続き、東南アジア市場に欧州市場を加えた2極体制にて、製品開発、ブランド育成、及びマーケティングノウハウなど、日本で培ったビジネスモデルを活かして市場を開拓することで、事業の拡大に繋げていく考えです。

医薬事業に関しては、創薬ターゲットの変化や新たな医療技術の発展により、研究・検査・治療の手法が変化していることに加え、薬価制度改革も進んでいることから、依然として厳しい事業環境が続いています。このような状況下においては、領域を超えた協働作業、創薬、そして臨床開発が必要だと考えています。当社では、外部研究機関や他社との連携強化を図り先端技術を取り込むことによって研究開発機能を強化し、パイプラインの拡充や新たな製品の早期上市に向けた活動を行っています。また、新製品を中心に医療用医薬品の普及・育成を行いながら、重点領域に関連した製品の導入や自社で創製した製品の導出にも注力し、事業拡大に努めてまいります。

最後に

大正製薬グループは、国内・海外のセルフメディケーション事業と医薬事業それぞれを国際的な競争の中でも着実に成長・発展し続けられる強固な経営基盤の構築を目指しています。

現在、医薬研究は知的資源の活用により急速に発展し、また人々のライフスタイルが変化することにより、生活者が欲するもの、情報の伝達経路や商品の流通経路が変化するなど、当社を取り巻く環境は急激な変貌を遂げています。いかなる状況でも機動的に経営判断できる体制構築と併せてコーポレート・ガバナンスの強化に努め、グループ全体で価値創造力の向上を図ってまいります。

今後とも一層のご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

2022年12月